以前に、「ネイティブの英語を聞き流すだけで英語がしゃべれるようになる?」ということについて、書きました。
その中で少し触れましたが、日本で、「英語が話せるようになりたい!」という人に向け、さまざまな教材や勉強法がネットを中心に発信されています。
その中で、
「とにかくたくさん英語を聞いていれば、ネイティブのようにしゃべれるようになる」
という考え方があります。その例として、
「子どもはたくさんの英語を聞く中で、文法を知らなくても英語を覚えていく」
と言われます。
ですが、私が言いたいのは、
「特に10歳未満の子どもと、自分の国の言葉(母国語)が完成している大人とでは、英語を学ぶ過程はまったく違う!」
ということです。
大人が英語を学ぶには、子どもとは違う方法が求められる
私の子ども達は、3年半前に、まったく英語ができない状態で西オーストラリア・パースにやってきました。
それ以来、子ども達が英語を覚えていく過程を、間近で観察してきました。
私の子どもは2人いて、上の娘は小6の時に、下の息子は3歳の時に、パースに来ました。
3歳でこちらに来た息子の場合は、今はほぼ会話のすべてが英語です。ここに来るまでは日本語を話していましたが、こちらで学校に通ったり、オーストラリアの子ども向けTV番組などを見ている中で、完全に英語をマスターしました。
発音も、オージーの人に「まるでオージーだね」と言われるくらい(笑)のネイティブ発音です。
そのかわり・・・今は、日本語は挨拶程度しか話せません。
彼の中では、英語が第一言語であり、日本語を「外国語」として覚えていくことになるでしょう。
日本の大人が英語を学ぶのとは、位置づけも道筋も、まったく異なることがわかっていただけるでしょう。
一方の娘は、日本語の基礎は出来上がっている状態で、パースにやってきました。
小学生で習う漢字が読めれば、日本の新聞はだいたい読める、と聞いたことがあります。その程度の日本語の能力が完成した状態だったので、英語はどちらかというと、私達大人のように「日本語ネイティブの人が、第二言語として英語を学ぶ」という状態に近かったと思います。
そのため、わからない英文を日本語の辞書を使って調べる、ということも必要でした。
英語を理解するために、日本語で文法の説明が必要なこともありました。
息子に比べたら、英語に慣れるのに時間もかかったと思います。
それでも、環境から吸収することは膨大で、成長期でもあるので、大人の私と比べたら会話はずいぶん上手になっています。
私達は3年半パースに住んでいます。
大人の人が、日本で英語を学ぼうと思ったら、おそらくより多くの期間がかかりますし、しかも日常的に英語に触れる機会が少ないのであれば、自ら機会を作り出し、工夫してやっていくことが必要になります。
英語ネイティブじゃない学生におススメされている勉強法
娘は現在、西オーストラリアのローカル公立ハイスクール(日本で言えば中学~高校)に通っています。
パースは、移民が多い都市。
以前ニュースで、人口の1/3は外国出身の人、というのを読んだことがあります。英語圏でない国から、家族を連れて移住してくる人も多いです。
そのためこちらの学校では、英語以外の言葉で育ってきた学生を支援するような制度を持つ学校も多いです。
娘の通うハイスクールでも、英語が母国語でない生徒を専門に見る先生がいて、週1,2時間ですが、英語力を補強するための専門の授業を行います。娘もその授業に参加しています。
昨年学校からもらったお知らせの中で、うちの娘のような「英語ネイティブでない」学生がやるべき、英語の勉強法をまとめたお手紙がありました。
その内容を、紹介してみたいと思います。
英語のレベルアップのために、英語圏の先生が学生におススメしている勉強法は・・・?
【見る(Viewing)】
・テレビのニュース番組を毎日見る。おススメはABCニュースまたはSBSニュース。
(ABCはオーストラリア国営放送。SBSは多文化・多言語の放送を行うオーストラリアのチャンネル)
・テレビや映画を見る時は、英語の字幕(subtitles)をつける。
【読む(Reading)】
・英文を毎日読む
・興味があるもので、色んな分野の英文を読む(例:ウェブサイト、雑誌、小説、ノンフィクション)
・Facebook、ブログ、YouTubeなど、文法的に正しい英語が使われていないものを読む。
【自分の辞書・用語集を作る】
・日常生活で使う言葉や、科目ごとに使う用語について、自分独自の辞書・用語集を作る。毎日見直して追加・修正していく。
・文章を書く時に、見直して利用する。
【ヘルプ】
・EAL/Dルームに毎週通う。(娘も参加している、「英語ネイティブ」じゃない学生のための授業のこと)
・わからないこと・できないことがあれば、先生に積極的に助けを求める。
・宿題・課題などは、期限より前もって仕上げ、先生に提出日前に一度チェックしてもらう。
・授業で習っているトピックについて、自分の国の言葉で書かれているものを探して読む。
最後の【ヘルプ】の部分は除くとしても、驚くほど当たり前のことばかりですよね!
特に【見る】については、テレビで「ニュースを見る」ということがおススメされています。
これは、時事問題一般に知識を深めるためにも、効果的。
世界の色んな出来事について、「英語ではどんな単語が使われているのか?どう表現されているのか?」を知ることは、英語そのもののスキルアップに確実につながると思います。
私自身も、まず初心者がリスニングの練習をするなら、「ニュース」は適した素材だと思っています。
過去記事では、YouTubeなどで字幕付きで見られるニュースチャンネルを紹介しました。
また、Facebookなどのソーシャルネットワークや、ブログなどの、いわゆる「正しい文法が使われていない素材」に触れることも、おススメされているのが、興味深いですね。
英語で広くコミュニケーションを取るには、英語のこうした使い方にも慣れる必要がある、というのは納得できます。
こういう「文法的に正しくない」英文は、日本の学校教育では取り扱われることはありませんが、英語には「フォーマルでない表現」もあり、場面によってはそういう表現が使われること・・・逆に言えば、こうしたフォーマルでない表現がどんな場面でふさわしく、どんな場面ではふさわしくないのか、を知ることも、英語を使う上では有益だと感じます。
まとめ
今回、オーストラリアの学校の先生が、英語ネイティブでない生徒におすすめする英語の勉強法について、紹介しました。
特に、「ニュース番組を見る」や「幅広い英文を読む」「Facebookやブログなどに触れる」等は、日本にいてもできることです。
インターネットが普及している現在では、海外有名人のSNSなども簡単にフォローできます。
また、私自身は、料理のレシピ、ガーデニング、ハーブなどのトピックは、英語のブログをよく検索します。語彙や表現を増やすことができます。
自分が行って見たい旅行先について、日本語の旅行サイトを読むだけでなく、英語のウェブサイトや口コミなどを読み込むこともおススメです。
ただ注意点として、こちらの学生は、日常的な環境で十分に英語に触れています。
同年代の友達と英語で会話する機会も頻繁にあるので、むしろリーディングや、時事問題などの知識を補強することが必要になるため、こうした勉強法がおススメされているんだと思います。
日本で英会話を学ぶ場合は、やはりこれだけでは足りないと思いますが・・・日本にいながら、少しでも英語に触れる機会を作るためのヒントになれば、と思います。