「英語が話せたらいいなぁ~。」と思って勉強してみたけど、話せるようにならなかった……。私にはムリなんだ……。
と思っている人はいませんか?
また、学生時代にあれほど学校で英語を勉強したのに、話せない……だから自分は英語が話せるようにならないんだ、と思っている人もいるでしょう。
日本では、英語を学ぶメリットは多くの人が認めているものの、英語に対する苦手意識もまた、根強いものがあります。
私自身も、学生時代はそれなりに真面目に英語を勉強したつもりでした。でも、オーストラリアに来たら、本当に英語が話せない自分に、がっくりしました……。
とはいえ、こちらにいる限り、英語を使わないわけにはいきません。そういう状況になり、ひとまず日本で学んだ英語をリセットし、一から「ネイティブ環境で使える英語」を学んでいくことになりました。
オーストラリア生活も丸5年。まだまだ英語がヘタだなぁ~と思うけれど、最初に来た時よりはずいぶん上達したと思います。英語でのやりとりがスムーズになってきたな、と実感する時は、素直にうれしいです。
そこで、わかったこと。
この程度のレベルまで英語が使えるようになるプロセスは、日本で英語を勉強した時と大きく違いました。
今振り返ってみて、「なぜ多くの日本人が『英語を勉強しても話せるようにならない』と思ってしまうのか。」がわかるような気がします。
それは、実は、英語を話せるために本当に必要なことをやっていないから……。
だと思います。
そこで、日本人の「英語の勉強」が、なぜ「英語を話せること」につながらないのか?
逆に、話せる英語を上達させるためには、どんなことが必要なのか?
について、私なりの経験から感じたことをまとめたいと思います。
「読む・覚える」と「話す・使う」のアンバランス
まず、「日本の学校教育では英語を話せるようにならない」とは、多くの人が感じていると思います。それについては、私自身も思うところがあり、過去にも「受験英語は英会話には役に立たない?何が問題点なのか。」や「日本の学校の英語教育は意味がない?何がいけないのか。」という記事を書いてきました。
多くの人は「英語を勉強する」と考えると思います。確かにそれは正しいですが、私自身が実感するのは、「英語の習得」とは、
学習 + 練習
の積み重ねが必要だということ。
「話す」ということは、正しい単語や文法を知っているだけではできないのです。覚える=勉強する、とは別に、覚えた言葉を使って「言う」「話す」という練習が、必要なのです。
例えば、お菓子作りが上手くなるためには……。レシピを読んで、小麦粉〇gと砂糖〇gと卵〇個をよく混ぜて泡立てて、〇℃のオーブンで〇分焼く。ということをまず知る必要があります。でも、レシピを読んで手順を覚えただけでは、お菓子は作れません。
お菓子を作ったことがない人が、いきなり難易度の高い「シュークリーム(ふんわり焼くのが難しい!)」や「マカロン(材料が特殊で扱いが難しい!)」などを上手に作れることは、まずありません。
それどころか、スポンジケーキやクッキーのようなシンプルなレシピだって、最初はなかなかうまく作れないものです。
だからもし、「お菓子作りができるようになりたい」と思ったら、まずは「簡単でシンプルなレシピからトライしてみよう」と思うでしょう。同じものを何度か作って見たり、それと似た別のものを作ってみたり……失敗したら、他のレシピを試したりするでしょう。
こうして少しずつコツを覚えて、だんだんとレパートリーを増やしていくと思います。
ある程度のレベルになれば、自分でアレンジもできるようになります。
多くの人は、自然とそうやっていくと思います。
英語も同じ!
……はずだけど、なぜか「英語」の場合、そういうふうにはなりません。
学校の授業で教えることは、英語の「知識」です。一方、「英語を使う」ということは、その知識を現実の中で使ってみる、ということ。ただし、日本の学校教育の中では、覚えた英語を使って「自由に会話する」という練習は、十分にやっていないと思います。「知識を覚えること」に比べて、「それを使う練習をする」量や機会が、極端に少ないです。
そのまま、英語の文法や読解などの学習の難易度だけが、どんどんレベルアップしていき、結果、英語の知識はあっても英語が「話せない」ということになります。
だから、英語で会話ができるようになりたかったら、簡単な文から「言う練習」をするとよいです。英語のできる人が、「まず中学生の教科書を完璧にマスターすべき」と言ったりしますが、この意味がよくわかります。英語の学習を始めた中学生レベルに戻って、学校でやってこなかった「話す練習」「言う練習」をとことんやるというのは、理にかなっていますよね。
英会話初心者の場合、どんな練習をしたらよいか?ということについては、「英語を話す練習、初心者は何から始めればいい?」という過去記事で紹介しています。これは、無料で、自宅で、一人でできる方法!
もちろん、海外の人と会う機会を作ったり、英会話教室に通うなども、事情が許せば大きなメリットがあります。特に、間違いを直してもらえたり、フィードバックをもらえるのは、大きなメリット。
ただ、自分一人でもできることはあります。
海外ドラマで「生きた英語」を学ぼう!の落とし穴
ところで、日本人の英語に対し、「ネイティブはそういう言い方はしない。」みたいな批判もよく聞きますね。
それも、日本人の英語コンプレックスを刺激する言葉の一つではないでしょうか(苦笑)。
そこで多くの人は、「英語の映画や海外ドラマで『生きた英語』を学ぶべきだ!」と考えるかと思います。
しかし……。ここにも落とし穴があります。
もちろん、洋画や海外ドラマで英語に触れようと言う発想そのものは、悪いと思いません。その人が楽しく続けられる方法で、英語に触れる、慣れる、という意味では、どんどん見たらよいでしょう。
しかし、私自身が自分の英語学習を振り返って思う事は、「洋画や海外ドラマで英語を学ぶのは、英会話上級者向き」ということです。
映画やドラマの会話は、わりと早口で聞き取るのも難しいし、テーマによっては、意外と難しい語彙や表現が使われていることも多いです。ちなみに私は、いまだに英語のsubtitleを表示させないと、十分に理解できません(汗)。
ちょっとした挨拶や会話のあいづち、リアクションなど、初心者でも取り入れられる点はあるかもしれませんが、割合としては、参考にはならない部分の方が多いと思います。
これも当たり前の話ですが、英語で簡単なレベルの会話ができないのに、複雑な会話をすることはできないんですね。
なので、海外ドラマなどは、「ある程度英語で基本的なコミュニケーションができる」人が、よりネイティブレベルの豊かな英語表現を身につけるためには、役立つ素材だと思います。
ですが、初心者レベルの人にとっては、まず短い文で「挨拶や簡単なコミュニケーションをどうとるか」を学んだ方が、有効です。
私が言いたいことは、洋画や海外ドラマを一生懸命見て、「全然英語が上達しない……」と言って挫折しないでほしい!ということ。
で、英語での会話の経験があまりなく、「生きた英語」をエンタメから学びたいという人に私がおすすめしたいのは、子ども向け英語作品です。
といっても、ディズニーとかは結構難しいので、初心者の英語の勉強という面ではあまりお勧めしません。私がいいと思うのは、海外の、「就学前の子ども達」が見るような作品です。
過去の記事「英語の会話に触れる!大人も学べる子ども向けアニメ動画」では、なぜ子ども向け番組が英語学習に良いのか、と言う理由と、YouTubeで見られる英語圏の子ども向け動画を紹介しています。
他にも、英語の会話を学びたい人で、英語に触れたことのない初心者の人に私がおすすめしたいのは、オーストラリアの子ども向け番組「play school」です。
幼稚園くらいまでの子どもが対象の番組ですが、ゆっくりとした話し方で、挨拶や話しかけ方、お友達との会話のしかたなどを知ることができます。驚くほどオーソドックスな文法が使われていると同時に、広範囲の語彙が使われていることがわかります。
Play School – Shapes
https://www.youtube.com/watch?v=NTmVyc9lDEU&t=348s
オーストラリア放送協会(ABC) のオフィシャルサイトABC KIDSでは、最新のたくさんのエピソードが見られます。
Play School – watch – ABC kids
最初、私はもちろん、この番組の英語も全然聞き取れませんでした(汗)。
子どもと一緒に見ながら覚えて行きましたが、英会話を学び始めるスタートとしてはとてもよかったと思っています。
「簡単な英語を話せる」ことが大事な理由
といっても、私達は大人だから、「子ども向けの英語を覚えるのはどうなの~?」と思う人もいるかもしれません。
確かに、ビジネスなど、社会の中で通用する英語は、最終的に「子どものような会話で」というわけにはいきませんよね。
しかし、「基礎的な英語力を養う」という意味では、まあ子ども向けかどうかはともかく、やはり最初は「英語圏の3歳児が話すくらいの」簡単な英語から始めていくのがよいと思います。
たとえば、「~が欲しい」ということを言い表したい時、子どもなら、
“I want orange juice!”
(オレンジジュースが欲しい!)
と言います。
が、年齢が上がり知的レベルが上がって行くと共に、語彙や表現が増えて行きます。そして相手や場面によって、
“I would like a cup of coffee.”
(コーヒーを一杯いただけますか)
と、want の代わりに would like to …を使って丁寧さを出したり、
“I would like to have a refund for the event that was canceled last week.”
(先週キャンセルされたイベントの払い戻しを受けたいのですが)
と、「~が欲しい」の「~」を説明するために関係代名詞を使ったり、と、より複雑な文型を扱えるようになっていきます。
このように、本来なら、簡単な言葉で自分の思いを言う、ということができて、そのバリエーションとして、シチュエーションに応じた高度な表現ができるようになります。
でも、日本人の大人が英語を学ぼうとした場合、必要に迫られる場合もありますが、いきなり3番目の例のような英語を話そう、とイメージする人が多いと思います。
ビジネス英語のフレーズ集などで、表現を暗記して決まった場面で使うことはできるでしょう。
でも、根本的な「話す力」「会話力」では、自分が使える単語や文法を使って、自分の言葉で考えを話すことが要求されます。シンプルな言葉でさえ自分の考えを言い表せない段階で、よりニュアンスのある表現を使いこなすのは、ムリなのです。結果、文脈に合わない不自然な英語になったり、柔軟な会話に対応できない消化不良な英語になってしまうのではないか、と思います。
だから、まず簡単でストレートな英語を使って話ができるようになることは、大切です。
で、「簡単な会話」に必要なものは何か、というと、文法は本当にシンプルなものでOKです。
現在形、過去形、未来形、否定形、疑問形、など……。
子どもレベルのシンプルな文って、実際どんなもの?の参考としては、過去記事
「英語で日記を書くなら?効果的に上達するための書き方を知ろう!」
を読んでいただくとよいでしょう。
一方、英語の日常会話を上達させたいなら、「語彙」を増やすことは重要です。
私達は学校でたくさんの英単語を暗記させられた、と思うかもしれませんが、むしろ日常会話には、それとは別方向の語彙が必要です。たとえば、家の中にあるものが、すべて英語で言えますか?体のパーツを、すべて英語で言えますか?文型はシンプルでも、身の回りにある単語を知っていれば、結構話せます。逆に知らなければ、難しい文法を知っていても話せません。
「子どもの英語」と言いますが、実は日本の大人が思うよりもずっと語彙が豊富です。先に紹介した子ども向け動画でも、それがわかると思います。
身の回りのものを英語で言えるようになるだけでも、話すのも聞くのもラクになり、会話の上達を実感できると思います。
たとえば、Cambridgeの以下のサイトでは、クイズ形式で語彙力を高められる子ども向けのアクティビティが、無料で提供されています。ごくシンプルなものですが、初心者の方にはよい教材だと思います。
Activities for children – Learning English – Cambridge Assessment
まとめ
私は時々、こちらで英語を学んでいく中で、「なぜ大人にとって英語を学ぶことは難しいのか?」ということを考えます。
私がよく思うのは、「ある程度知的能力が出来上がって、社会的地位を確立した大人にとって、『言葉がうまく話せない』ことは大きな苦痛だ」ということです。
日本語ならば、きちんと大人としてふさわしい表現ができるし、自分の考えを100%言い表せる。
でも、英語で話すとなったら、本当に簡単な、子ども以下のレベルのことしか言えない……。
多くの人は(私自身も含め)そのことにいたたまれなさや居心地の悪さを感じてしまいます。大人として生きているプライドを、壊されるというか。言葉がしゃべれないって、人をそういう気持ちにさせるものなんですね。
だから、いきなり「ビジネス英語」「海外ドラマ」となってしまうのかもしれません。恥をかきたくない、ネイティブ社会で通用する英語を短期間で話せるようになりたい、と思う気持ちはよくわかります。
でも、本文で書いた通り、いきなりネイティブレベルの英語を話せるようにはなりません。
最初は自分の言いたいことの10%も言えないかもしれません。英語で話す自分は、日本語で話す自分より、ずっと幼稚で、物足りなく、出来の悪い人間に思えるかもしれません。
英語の勉強って、そんな自分との闘い、から始まるような気がします。
「こんな簡単なことしか言えない」という恥ずかしさや不甲斐なさに負けないで、話す練習を続けていくこと。
でも、「英語がペラペラに話せる」人はみな、多かれ少なかれそういう自分を乗り越えながら、根気強く学習を続けている人だと思います。それを励みにして、謙虚に、かつ自信を持って続けて行きましょう!