前回の投稿では、
日本人は英語が苦手、とよく言われるが、、、
それは本当なの?
それはなぜ?
ということについて、西オーストラリア・パースで15年以上、多くの日本人に英語を指導してきた、Jake Hudson さんに話をうかがいました。
生粋のオーストラリア人でありながら、日本語ペラペラ。言語学の見地から『日本の大人に効果的な英語指導』を行ってきたジェイクさんは、ちまたでよく言われる「日本人は英語ができない論」についてどう見ているのか・・・。
については、前回の投稿をお読みください。
今回は、日本人の英語環境をふまえて、特に初心者の人を対象に、確実に英語力をアップするためにできること、おすすめの勉強法などを、ジェイクさんに紹介してもらいました。
日本にいて、英語を話す機会を増やす方法
前回のお話で、ジェイクさんは、
日本人が英語を話せないのは、「『自分の耳で英語を聞き取って、自分の口で英語を返す』という経験はほとんどない。」からだ。
とおっしゃっていました。
そのため、「英語を話す機会を増やす」ことができれば、英語を話す力がつく、というお話がありました。
しかし、日本国内では、英語を話す機会自体がなかなか得られない、と思って行き詰っている人も多いんじゃないかと思います。。。
ジェイク:
「英語を話す練習、という意味では、英会話教室に通うのは、全然悪くないですよ。」
「安い英会話教室も悪くないですよ。プロのアメリカ人の先生じゃなく、英語圏からワーホリで来ている人や学生さんが(英会話の先生を)やっているので、言語教育の経験のない人が先生をやっている、というのはあるけれど、それでも良い『話し相手』にはなります。」
英語で人と会話する機会を作るために、最も確実で定番ともいえる、「英会話教室に通う」という方法。「通うだけでは英語はうまくならない!」という意見もありますが、『話す練習をする』という点について考えれば、利用価値がある、とジェイクさんは言います。
金銭的な理由や諸事情から、英会話教室に通えないとか、英会話教室だけでなくさらに話す機会を増やしたい、という人もいるかもしれません。
ジェイク:
「Exchange Partnerを作るという手もあります。東京や大阪にいる人なら結構簡単にみつかりますよ。これは、日本にいて日本語を勉強したい外国人と知り合いになって、こちらが英語を練習させてもらう代わりに、相手に日本語の練習をさせてあげる、というものです。20年前は、英語雑誌(Metropolis)にLanguage Exchange Partner募集の欄があって、そこに掲載したりしたんだけど、今はネットでも探せますね。」
「ただし、最初は必ず公共の場で会ってくださいね!ミスタードーナツとかね。いきなり家はダメですよ!」
(筆者笑)
ちなみに、私が後で調べたところ、Exchange Partnerについては、こんなサイトがありました。
Searchで相手の条件を指定できます。相手の「話せる言語(English)」「学習したい言語(Japanese)」「国(Japan)」「都市(例えばTokyo)」と指定すると、『東京にいる、日本語を勉強したい英語話者』を探すことができます。
直接会うだけでなく、スカイプでのチャットやメールでのやりとりも選べるみたいです。興味があったら会員登録してみてください。
他にも、Language Exchange Partner などのキーワードで探すと、みつかるかも?
ジェイク:
「また、私が日本にいた時に住んでいたところでは、自治体がボランティアで日本語サークルをやっていたんです。地域に住む外国人に、ボランティアのおばさん達が日本語を教えていたんですね。そういうところに相談して、話し相手を探すのも手かもしれないですよ。」
「会話の練習をする時は、できればネイティブスピーカーがいいですけど、(英語が母国語じゃない)外国人の人もいい話し相手になるんですよ。たとえば韓国人や中国人の人で、英語ペラペラじゃなくても、『英語で話す練習』をするにはよい相手です。」
必ずしも英語ネイティブでなくてもOK!非英語圏の人と触れ合うチャンスがあったら、英語で話をする機会を作ってみるのもよいですね。
日本にも海外から来た人は実はたくさん住んでいて、ただ接点がないだけ、ということもありそうです。
また、今だとスカイプを使ったオンライン英会話も人気です。
ジェイク:
「はい、僕もオンラインスカイプ講座やってます♪ 50分で30ドル。」
「ただねー・・・正直に言わなければならないのは、『フィリピン人の先生と1時間●百円でスカイプで会話する』とかいうのもあるけど、それもダメなわけじゃないですよ。ちょっとなまりはあるかもしれないけど、英語を話す練習にはなります。」
「ただ、文法や文の作り方については、日本人の先生にちゃんと教わった方がいいですね。」
おっと、自分のスカイプレッスンを宣伝するのかと思ったら、、、正直過ぎます~、ジェイクさん!!
低価格のスカイプ英会話も、「話す機会を増やす」という意味では使える、ということですね。ただし、あくまで話す練習にはなりますが、英語の「基本的な文の作り方」などの基礎については、日本人の先生にちゃんと習うべき、ということです。
その両方が実現できる、ジェイクさんのスカイプレッスンについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
というわけで、「日本人が英語を話せない」理由である、「話す経験が少ない」という問題点については、ここで紹介したような方法で「話す機会を作っていく」ことがよいですね!
英語を話すためにおススメの勉強法や教材は?
ところで、スカイプレッスンなどで「話す機会」を作っても、そもそも「英語で会話ができない(涙)」「言いたいことを英語でどう言ったらよいかわからない(涙)」という人も多いと思います。
大人の人は、単語の羅列や身振り手振りではなく、やはり「(ビジネスや一般社会で通用する)ちゃんとした英語」が話せるようになりたい、と考えると思いますが、『文法』についてはどうですか?
ジェイクさん:
「今の日本人の大人の人は、『文法』という単語に対してトラウマを持っていると思うんですよ。難しい勉強を思い出し、『文法=つめこみ学習=効果的じゃない=しゃべれるようにはならない』と思うかもしれない。」
「夏目漱石は英語の先生だったんです。彼は『英語文学』はできたが、本当の英語は聞いたことがなかったんです。本の勉強はできたけど、英語はしゃべったことがなかったんです。こういう歴史と文化は(日本の今の英語学習のスタイルに)関係しているのかも?・・・わからないけどね。」
「そして多くの人が、高校時代に習った英語の文法が全然わからなかった!使えるようにならなかった!っていう問題を抱えてしまっていると思います。」
そう、『文法』=難しい!というイメージがまず浮かびます。
が、ジェイクさんはここで一冊の本を取り出しました。
これ。
(画像はAmazon.co.jpへリンクしています)
ジェイク:
「この本は Grammar(文法)と書いてあるけれど、文法の難しい専門用語、他動詞・自動詞・be動詞・・・といった言葉は書いてない。だってみなさん、英語の『文法について』知識を増やしたいわけじゃないでしょう。(英語を使えるようになりたいわけですよね)」
「ここでいう文法とは、『文のパターン』という意味です。たとえば、「AはBにCをしてほしい」と言いたい時は、「A want B to do C」というパターンを覚えないといけないんだよ。日本語でこう言いたい時は、英語でこういうパターンを使うんだよ、というのを覚えるのは大事。」
「英語の勉強には、こういう本があるとよいです。」
ところで、この本は海外の英語学習者には定番の本みたいですね。でも日本ではほとんど知られていないと思いますが・・・?
ジェイク:
「もう一つの問題は、英語の教材の商業競争が激しい。本屋に行ったら、英語の本が壁いっぱいになってるよ。3000円で『文法』って書いてある本が売れるわけないよ。でもこのケンブリッジの本は、世界一有名な『英文の作り方の教科書』よ。僕が日本にいた20年前は、この本が一つの壁になってたよ。日本語版もあった。でも今は出版されていない、売れなかったんだろうね。
(日本語版は)今は数百円くらいの小さい文庫版?が出ているらしいけど、それは練習問題が入っていません。」
へぇー、昔は日本でも売られていたのに、逆に人気がなくなってしまったんですねぇ。
ジェイク:
「他の本でも、どんな本でもいいけれど、英語の『会話の例』『単語』が載っていて、『紛らわしい部分についての解説』があって、『練習問題』がある。こういう本がいいです。」
「文法の知識ではなく、『英語の文のパターンを教えてくれる教科書』がいいです。それがあればなんでもいい。」
「でも、『なぜ俺は3か月間で英語がしゃべれるようになったか!?』みたいなのはやめたほうがいい(笑)」
「『文の基本的な作り方』みたいな題名がついている本がいいです」
はい、『3ヶ月で英語がペラペラになる秘密!』みたいな教材は、お金のムダってことですね(笑)。
つまらないと思うかもしれないけど、結局は、言いたい日本語に対応する「英文のパターン」を覚えることが、「使える英語の勉強」ということなんですね。そしてそれを覚えられる本が、教材としては確かなもの、と言うことです。
日本で人気の『間違った勉強法』は?
ここまでジェイクさんにお話を聞いたところ、『大人がやるべき英語の勉強法』って、実は驚くほどシンプルでオーソドックスなものだなーと思いました。
ジェイク:
「あと、日本でよく言われるのが『頭の中の日本語を英語に直してはいけないんだよー』とか、ありますね? あと、(語学教育の知識のない)ネイティブスピーカーの先生が言う『辞書を使わないでよ』とか『辞書は英英だけを使ってよ』とかね。
・・・これはまったく何もわからない人の偏見。(笑)
そんなこと言ったってみんな、(英和)辞書使いますよね。英英辞典使ったって、説明に知らない単語が入っていたらそれ以上進まないでしょ。」
そうですよねー。英和辞書を使わなかったら、英単語の意味がわからない(笑)。
ジェイク:
「ただ、『一つの英単語が必ず一つの日本語の単語にあてはまる』という考えはちょっとあぶないね。」
「日本語の単語と英語の単語では、意味が似ているとこもあるけどそうじゃないところもある。中級~中上級以上はそれを気にした方がいい。」
「それより下の初級レベルの人なら、それはとりあえずあまり気にしない方がいい。必要な単語と文のパターンを覚えることが最優先。」
「日本語の文を英語に直して、英語の文を日本語に直す。という練習を何回もすると、頭の中の記憶の回路がつながってくる。」
確かに、私自身もジェイクさんの授業を受けたことがありますが、このような練習をやりました。「主語+動詞+目的語」の、シンプルで短い文ですが、日本語でこう言う⇔英語でこう言う、を、最初は書いてみて、その後書かれたものを見ないで言う練習を繰り返しました。慣れてきたら、書かずに言えるようになりました。
ただ、日本の学校教育と違う点は・・・学校のテストでは、英訳・日本語訳をする時、一つ一つの単語と訳が必ず対応していないと×になったりしましたが、ジェイクさんの時は、(細かい単語単語ではなく)文全体でとらえて変換する練習をしました。
ジェイク:
「名詞は、『英語⇔日本語』で対応させて覚えることができます。でも、動詞と形容詞はそうじゃなく、文のパターンとして覚える必要があります。」
「たとえば、『比べる』という動詞では、辞書を引くと『比べる=compare』と出てきます。が、 会話の中で使うには、『AがBとCを比べる』(A compare B with C)という文のパターンで覚える必要がありますね。」
なるほど。。。動詞や形容詞は、単語単語で覚えるより、「文のパターン」で覚えること。これ重要ですね。
ジェイク:
「『頭の中で英語で考えましょう~』・・・ってよく言われているけど。」
「・・・(笑)考える時は、英語でも日本語でもないんですよ。【考える】ということと、【言葉にする】ということは、ぜんぜん別のこと。話せない子どもは、動物は、考えがないわけじゃないんですね。言葉じゃないけど。言葉は、自分の考えを相手に送るためのフォーマットなんです。」
「だから、『頭の中は英語で考えましょう~』という話は、英語産業の中に回っているだけの神話。ちゃんと勉強してきた先生の中で、そう思っている人は一人もいないよ。」
ということです!
だからみなさん、英和辞典を使っていいし、日本語でノートを取ってもいいし、頭の中ですぐにスラスラ英語が出てこないからって、心配しなくて大丈夫!
特に私達大人の場合は、第一言語が日本語なわけなので、それを足掛かりに英語を勉強していくことが、効率がいいし理に適っていると言えますね。
ジェイクさん、たいへん興味深いお話を聞かせていただいて、ありがとうございました!
まとめ
今回は、特に「社会人の英語学習で、初心者・初級レベル」の人向けのアドバイスとして、ジェイクさんにお話を聞かせてもらいました。英語の勉強をしたいけど、「難しくてどこから始めたらよいかわからない」「どんなふうに勉強をしたらよいのかわからない」という方に、参考になれば幸いです。
今回お話のあった『英語の勉強法』について、更にジェイクさん自身が詳しく解説したYouTube動画もありますので、興味ある方は、こちらもぜひチェックしてください。
「効果的な英語の勉強の仕方」という5本の動画リストになっていて、
- ノートの使い方
- 電子辞書の使い方
- 独学する人向けのテキストの選び方
- リスニングの練習方法
- スピーキングの練習方法
という内容になっています。特に個人的に見てよかったのは、「2.電子辞書の使い方」。意外と知っているようで知らない辞書の見方について、ジェイクさんが詳しく解説してくれています。
ジェイクさんのYouTubeチャンネルでは、他にも英会話レッスンの無料動画がたくさんアップされています。
リングイスト ジェイクの英会話 - YouTubeチャンネル
興味ある方は、ぜひチャンネル登録してみてくださいね。
また、マンツーマンでレッスンを受けてみたい!という方へ、日本からも、ジェイクさんのスカイプレッスンを受講することができるんです!くわしくは次の投稿を。
こちらの記事では、ジェイクさんのスカイプレッスンを紹介するとともに、今流行のスカイプ英会話を受講する際の、一般的な注意点や、活用のコツについて書いてあります。