英語が話せるようになりたいと思って、いっぱい練習しているのに、
「英語の発音が苦手」
「どうしても英語らしく発音できない」
と悩む人は少なくないと思います。
日本人にとって、なんでこんなに英語の発音って難しいんでしょうね?
英語の発音が「英語らしく」できない理由として、多くの人が「 R と L の区別が難しい」といったことを挙げると思います。
しかし、私がこちらで英語ネイティブの発音を聞いていて思ったこと・・・
RやLが入っていない単語でも、実はネイティブの発音と私のような日本語英語では、ずいぶん違って聞こえるな~、ということです。
「あ、い、う、え、お」でさえも、英語と日本語では微妙に違って聞こえますよね???
多くの人は、漠然と「英語らしい英語」と「日本人の発音する英語」が違う、とわかっている。
でも、なぜ違うのか???何が違うのか???
ということについて、なかなかわかりやすい説明を得ることができません。
私はその点について、「英語の母音」という観点から考えてみました。
英語の母音
単語の中には、必ず1つ以上の「母音」が入っています。
単語を聞きわける上で、母音がとっても大切な要素です。
日本語では、母音(あいうえお)は5つあります。
英語の母音はいくつあるかというと・・・20個だと言われます。
(これはイギリス英語の場合で、アメリカ英語、オーストラリア英語など、また違いがあるそうですが。)
多いですね!!
その中には、
sky /skaɪ/ ← aɪ で一つの母音
bear /beə/(イギリス英語) /beər/(アメリカ英語) ← eə で一つの母音
など、一つの母音の中に2つの音が入っているものもあります。
それをのぞいて、単純に一つの音だけの母音 ( ɑ: や e など) だけでも、12種類あるそうです。
英語には、日本語にない母音がたくさんあるんですね。
今まで自分が発音したことのない母音を発音する、というのは、やはり難しいことです。
では、英語の母音って実際にどう発音するか?
調べてみました。
日本語とどう違うのでしょうか?
英語の母音の発音のしかた
英語の母音をどう発音するか。
英語の母音の発音の説明に、時々こんな図が使われます。
ネット上にはいろんなタイプの図がありますが、Roach(2004)の図が最も定番のようですので、、、その図に、ちょっと見やすいように加工を加えました。(オリジナル画像の出典は、https://en.wikipedia.org/wiki/Received_Pronunciation より)
これは、母音の発音記号と、口の形の関係性を書いた図です。
図の見方としては、
◆口の開き具合(たて)
(上)より狭くなる・閉じる ー より広くなる・開く(下)
◆舌の位置(よこ)
(左)前の歯に近い位置にくる ー 奥ののどに近い位置にくる(右)
◆rounded or not (青いアンダーライン)
発音する時に、唇をすぼめるか(rounded)、すぼめないか(unrounded)。
roundedの場合は、チューする時の唇の状態にして、口の開き具合を変えるようなイメジ。 unroundedの場合は、唇に力を入れず、口の開ける大きさを変える。
の、3つの指標があります。
上の図を、『左を向いた人の横顔の口の中』をイメージして当てはめてみると、わかりやすいです。
たとえば・・・
/i/ (例 see ) を発音する時は、口を横に広げることで空間が狭くなり、舌が口の上部、歯の裏側に近づきます。
/æ/ (例 cat )は、口を開き、舌を外側(歯のある方)に維持したまま、下側にキープします。
やってみてください・・・そんな音になります、よね???
では、たとえば/u/ はどうでしょう?
/u/ (例 blue ) は、上下の口を近づけて、唇をしっかりすぼめます。舌が口の中で奥の方に行くように意識してみます。少し低めの響きになります。
ちょっと英語っぽい、日本語とは違う「ウ」になりませんか?
/ə/(例 away) や /ɜː/ (例 turn)は、唇はすぼめず、力を入れないように中途半端に開け、舌は口のちょうど真ん中あたりに収まっている状態にして、声を出します。
日本語の「あ」とも「う」とも「お」ともつかない音になります。
そう、ソレです!
※turn は、イギリス英語の場合は /tɜːn/ ですが、アメリカ英語の場合は /təːrn/ となります。どちらも、口の形は同じですが、アメリカ英語の場合は母音の終わりにrが入ります。
もちろん、それぞれの舌の位置は、完全に正確ではありません。ネイティブと言えども、個人差もあるし、音の組み合わせによっても臨機応変に変わっていくはずです。ただ、「音を出す時の意識のしかた」として、とらえてみるとよいのではないでしょうか?
発音記号を見ながら発音を練習する場合は、この図を参考にしながら、舌の位置に気をつけてみるとよいかもしれません。
英語の母音は、口の中を、手前から奥に大きく使っていることがわかります。
特に、舌が奥の方にありながら発音する母音が、4,5個もあるんですね。
これは私自身が日本語と英語をしゃべってみて思うことですが、日本語の母音「あ、い、う、え、お」を言う時、ほとんど舌を前後(手前と奥)に動かさなくても、言えると思いませんか?
「お」を言う時は、若干舌が奥に下がるかな・・・?
まあ、ほとんど舌を「前側」に置きっぱなしでも、発音が難しくないですよね。
母音を発音する時も、口の開け方はよく注目されるけど、舌の奥行きなんて意識することはありません。
反面、英語の場合は、舌を「奥の方に」使うことが、日本語よりもずっと多い、と感じます。
私達の多くは、子音の r が難しい、と思っているし、それが英語の特徴のように思っているけれど、実は舌が口の手前側につかない、奥まったところにあって発音される「母音」が、r のように聞こえるのかもしれません。
たとえば、bird /bɜːd/ と発音する時、多くの日本人は 「r がむずかしい~!」と思うかもしれません。が、実際にこの単語の中で伸ばす音というのは、r ではありません。舌を口の中間に維持したまま声をのばす、/ɜː/です。
またたとえば、core /kɔː/ という単語も、実際に伸ばす音は r ではなく、舌をのどの奥側に留めて声をのばす /ɔː/ という母音。アメリカ英語の場合は、その最後に r がつくのですが、発音のメインはこの母音であり、この音を出す時に舌が奥まったところにあるため、r のような音に聞こえるのかも。。。そしてこのような母音は、日本語にはありません。
だから日本人が英語の発音をする時には、あえて舌を「奥に動かす」ことを意識すると、よいのではないでしょうか。
言い分けるのが難しい母音も、これでスッキリ!
今でも英語の発音がニガテな私ですが(汗)、特に言い分けるのが難しい、と感じたのが、たとえば以下の単語でした。
warm /wɔːm/ 温かい |
worm /wɜːm/
ミミズなどの虫 |
左側のwarmは、/ɔ:/ なので、唇をすぼめて、舌を奥の方にひっこめます。
右側のwormは、/ɜː/なので、唇はすぼめず、舌を口の空間の真ん中に置きます。
このように、口の形と音を覚えないといけません。
日本語の「ウォーム」と「ワーム」ではないのです!
また、イギリス英語とアメリカ英語では、少し発音が異なります。
上に紹介した発音はイギリス英語のものですが、アメリカ英語では /wɔ:rm/ です。
母音の終わりに r が入っているのが、アメリカ英語の特徴です。
これは、「アメリカ英語の方がイギリス英語に比べて r が強い(巻き舌の印象が強い)」と言われることと、関係がありそうですね。
warmとwormの違いと同じ発音の違いを持つ、似た単語の例を、以下にまとめます。
言い分けられるように練習しましょう!
/ɔː/ | /ɜː/ |
---|---|
warm | worm |
born
bearの過去分詞(生まれた) |
burn
燃える |
torn
tearの過去分詞(引き裂かれた) |
turn
曲がる、回す、など |
four
4 |
fur
毛皮 |
war 戦争 |
were we were, you wereなど |
発音の練習に最適な無料の練習サイト
今回紹介したことを含め、発音の練習はやっぱり「発音を聞かないと、わからない」!
『BBC Learning English』という、イギリスのBBC放送が運営している英語学習者向けサイトに、とってもよい発音練習のページがあります。
それぞれの発音記号について、どう発音するのか、が動画で見られます。
これが全部無料なんて、めっちゃいい!
また、「英語の発音」をテーマにした動画も更新されており、これはすごくいいですね~。
私もまだ見切れていないので、ちょこちょこ見て行きたいと思ってますが。
今回紹介した、/ə/や/ɔː/や/ɜː/の発音のしかたも、ぜひ実際に動画を見てチェックしてみてください!
まとめ
なぜ私達日本人が英語の発音がニガテなのか・・・。
私は今回、「母音と舌の位置」の図を見て、なんとなく考えました。
日本語の発音では、英語ほど「舌を奥の方に維持する」母音がないですよね。
だから私達は、舌を奥の方にキープすることに慣れていないし、舌がなかなかそう動かない。口の動きと言うのも「運動」の一種なので、そういうふうに口を動かす「感覚」を、本来私達は持っていないのだろうな、と思いました。
ただ、私自身が今回思ったのは、英語の母音が完璧に発音できないとしても、「だから英語ができない」ことにはならないということです。それでも、このような「英語と日本語の母音の出し方の違い」を知ることにより、少しでもより「英語らしい発音」をめざしていくために、知らないよりも役に立つんじゃないか、と思いました。
今回書いたことは、「こうすれば100%完璧な英語発音ができる!」というようなものではなく、よりネイティブ英語に近い発音をするために、目指すべき指標のようなもの、、、ととらえてほしいです。
また、今回の発音記号などは、イギリス英語を基本にしました。アメリカ英語では発音記号の表記も発音そのものも、少し異なるようです。
私自身、やはりたくさんのネイティブ英語を聞いているだけあって、発音だけに集中して練習する時は、少しずつ上達してるんじゃないかなぁ、と思ったりします。
でも実際に英語を話す時は、単語を思い出しながら、文法を考えながら、言いたいことを組みたて、言葉に出し、相手の話を聞き・・・ということをいっぺんにワーッとやるわけです!
そんな時は意識が飛んでしまって、つい舌の力がゆるんでしまい、日本語英語の発音になっちゃいますね(笑)。
やはり練習は大切です!