英語を学ぶ時に、目標地点と言うのは人それぞれだと思います。
「私はネイティブレベルじゃなくていいから、せめて基本的なことくらいは英語で言えるようになりたいな。」
と思う人も多いでしょう。その場合、
「とにかく、挨拶や返事のしかたなど、決まり文句を覚えるのが近道では?」
と考えるかもしれません。
もちろん、それも大切なこと。
しかし、人とのコミュニケーションの場面では、会話の内容は驚くほど多くのバリエーションがあります。英語を話す場面に遭遇すればするほど、「自分が言いたいことを言うために(あるいは相手の言いたいことを正確に理解するために)、英語の文のしくみを知っておくことがとても役に立つ」ということを実感するのではないでしょうか。
というわけで、今回は「英語の文を作る時、最も基本となるものは?」ということ、英語の文を組み立てる時に重要なポイントのひとつを紹介します。
英語にはいくつかの文型がありますが、それがどうやって決まるのか?
重要なのは、「動詞」。
動詞の種類によって、英語の文型にバリエーションが生まれることを説明します。
英文になくてはならない要素は?
英語の文は、いくつもの単語からできています。
その中でも、英語の文の中で「これがなくては英文ではない!」という要素があります。
それは……。
主語 + 動詞。
文の基本は、「誰が・何が(主語) + 何をする(動詞)」からできています。
例文)
Sam and Anna go to the library every Friday.
サムとアンナは毎週金曜日に図書館へ行く。
→ (主語:誰が?)サムとアンナ
→ (動詞:何をする?)行く
→ (補足)図書館へ、毎週金曜日に
My son cooked dinner this evening.
今夜は私の息子が夕食を作った。
→ (主語:誰が?)私の息子
→ (動詞:何を?)料理した
→ (補足)夕食を、今夜
I will give you my address later.
私の住所を後であなたに渡しますね。
→ (主語:誰が)私
→ (動詞:何を)あげる
→ (補足)あなたに、私の住所を、後で
上のように、「動詞」の部分は、「~する」だけじゃなく、過去のことを「~した(-ed, did など)」といったり、未来のことを「~するだろう(will + 動詞/ be going to + 動詞)」と言ったりしますよね。現在進行形や、現在完了形になったり。
あるいは、「~することができる(can + 動詞)」「~するかもしれない(might + 動詞)」などなど……、いろんなパターンに成り得ます。
しかしながら、基本的にどんな英語の文も、「主語 + 動詞」を基本にしています。
ですが、ほとんどの場合、主語+動詞だけでは、文は不完全です。言いたいことが十分には伝わりません。
そのため、上に書いた「(補足)」の部分が必要になります。英語では、これらの「補足」は、通常「動詞」の後に続きます。
ところで、上の3つの例を見てみると、
Sam and Anna go to the library …
My son cooked dinner …
I will give you my address …
となっていて、文によって、動詞の後に続く単語のパターンに違いがあります。
“go to the library… “ のように、「 to + 名詞 」(~に)となっている文もあるし、“cooked dinner …”, “give you my address…” のように、動詞の後に直接「名詞」が来たり、さらに「名詞」が2つ続くパターンもあります。
では、どんな場合に to などを付ける必要があり、どんな動詞はつけないでいいのでしょうか?
動詞には2種類ある?
ここで知っておかなければならないのは、「英語には2つのタイプの動詞がある」ということ!
(1) 目的語と一緒に使う動詞 – Transitive verb (T)
動詞の後に、必ず「~を」に当たる名詞(これを目的語という)が続くもの。
その行動を行うには、「対象」が必要な動詞なので、必ずその対象が「何か」を示す「目的語」が必要です。
日本の文法用語では、このような動詞を「他動詞」と言います。
例文)
I know him.
私は、彼を知っている。
I drink coffee every morning.
私は、コーヒーを飲む(毎朝)。
(2) 目的語を必要としない動詞 – Intransitive verb (I)
動詞の後に、目的語がつかないもの。
その行動は「対象」を必要としない動詞なので、「目的語」を必要としません。
日本の文法用語では、これを「自動詞」と言います。
例文)
She came at 6 o’clock.
彼女は、来た(6時に)。
I work at a cafe.
私は、働いている(あるカフェで)。
「他動詞」と「自動詞」の例)
T verb (他動詞) | I verb(自動詞) |
---|---|
see(~を見る、~に会う)
love(~を愛する) know(~を知っている) put(~を置く、~を取りつける) learn(~を学ぶ) catch(~をつかむ) get(~を得る、~を手に入れる) eat(~を食べる) help(~を手伝う、~を助ける) などなど。 |
go(行く)
come(来る) run(走る) work(働く) stay(とどまる) dance(踊る) sleep(眠る) walk(歩く) listen(聴く) などなど。 |
これを見て、漠然と「『~を』が必要なのが他動詞、それがいらないのが自動詞なんだな!」と思うかもしれません。
確かにそれは、ある意味では正しいです。が、100%ではありません。
日本語に訳した時、「~を得る」「~を見る」「~を食べる」……と言うから、「(英語の)他動詞」、とは限りません!(その逆もまた同じ)
では、どの動詞が「他動詞」なのか、「自動詞」なのか、どう見分けるのでしょうか?
…… 英和辞書 を見てください!
たとえば私の持っている 電子辞書 エクスワード では……。
‘know’ を引いてみると、
‘come’ を引いてみると、
このように、辞書には必ず、動詞については、「自動詞」「他動詞」という表示があります。
また、英英辞典の場合は、(T)(=他動詞)とか(I)(=自動詞)とか書いてあります。
動詞の種類で文型が決まる
他動詞(T)の場合、
“I know him.”
“I drink coffee …”
などのように、動詞の後に目的語にあたる名詞が来ます。この目的語が来ないと、不完全な文になってしまうのです。つまり、ネイティブにとっては、「不自然な英語」なんですね。
一方、自動詞(I)の場合は、
“She came.”
の後に、「~を」という目的語は要りません。多くの場合、補足情報として、to school, here, tomorrow… などにように、場所や時間を表す言葉が続くことはあります。が、なくても文法上は問題ありません。
このように、辞書で「他動詞」「自動詞」を知ることによって、「この動詞は目的語をつけないといけないんだな」「目的語はいらないんだな」ということが判断できます。
【補足】
文法用語の話ですが……。
“I know him.” のような、他動詞でできている文の文型を、
主語(Subject) + 動詞(Verb) + 目的語(Object) → SVO
“She came.” のような、自動詞でできている文の文型を、
主語(Subject) + 動詞(Verb) → SV
などのように、文法書には表記されることも多いです。
おおよその場合、動詞の意味から、他動詞?自動詞?は推測できるかもしれません。
しかし、必ずしも「意味が他動詞っぽいから」「意味が自動詞っぽいから」で判断すると、間違うことがあります。
良い例として、enjoy (楽しむ)という英単語があります。
私達はよく、「ピクニックどうだった?」「楽しかったよ!(楽しんだよ)」とか言いますよね。そこで、
“How was the picnic?”
“It was good! I enjoyed!“
みたいに言いたくなるんですね。
でも、これは英語としては不自然です。辞書を引くとわかりますが、enjoy は「他動詞」なのです。
だから、
必ずこの something が必要なのです。
だから、以下のように言うのが正解。
○ I enjoyed the picnic.
○ I enjoyed it.
○ I enjoyed myself. = 楽しい時間を過ごした。楽しかった。
あるいは、listen(聴く)という単語はどうでしょうか?
日本語では、「~を聴く」と考えるのが普通ですよね。
でも、英語辞書を引くと、これは「自動詞」です。そのため、
という文は、文法上正しいです。
そして、「音楽を聴いている」と言いたい時は、
× ”I’m listening music.”
○ ”I’m listening to music.”
to が必要になります。
「なぜ、listen には to が必要なの?」……と考えても、意味がありません。英語では listen という動詞の使い方は、そのように決まっているのです。
つまり、動詞の意味を覚える時は、必ず「この動詞は他動詞(続けて目的語を付ける必要がある?)か、自動詞(目的語はいらない?)か」をセットで覚える必要があります。
実は、これが重要なポイント です。
目的語が2つ?SVOOとは
さらに、他動詞の中でもいくつかの動詞は、ちょっと複雑な使い方をします。
たとえば、give(あげる、与える)は、
“I’ll give my address.”
私のアドレスを渡します。
もOKだし、
“I’ll give you my address.”
あなたに、私のアドレスを渡します。
という使い方もできます。このように、目的語が2つ続く形で、「~(あなた)に、~(私のアドレス)を、あげる(=渡す)」という意味になります。
また、同じ意味で、
の形もOKです。
まとめると、
○ give something
○ give someone something
○ give something to someone
人(someone)に、物(something)をあげる
give のような使い方をする動詞は、他に、
buy | 人に物を買ってあげる |
offer | 人に物・事を提供する、差し出す |
pay | 人に代金を払う |
read | 人に本を読み聞かせる |
などが有名です。
このような動詞は、辞書では、
【他動詞】かつ、
・SVO1O2/SVO2 to O1
・+目的語+目的語/目的語 to (代)名詞
などのように表示されています。
また、文法用語としては、
“I’ll give you my address.” の文の文型を、
主語(Subject) + 動詞(Verb) + 目的語(Object1) + 目的語(Object2)
→ SVOO
といいます。
まとめ
今回は、英語の文型が決まる要因として、動詞には2つの種類があることを紹介しました。
しかし、実は英語の動詞には、「自動詞」と「他動詞」両方の使い方をするものが数多くあります。
たとえば、stop という動詞は、
I stopped the music.
私は音楽を止めた(他動詞)。
The music stopped.
音楽が止まった(自動詞)。
の、どちらにも使います。
肝心なことは、日本語の意味で「自動詞か?他動詞か?」を考えないコト!
あくまで辞書でチェックしましょう。
そして動詞の意味を覚える時は、日本語訳だけでなく、「~を」にあたる目的語が続く他動詞か、それを必要としない自動詞か、までをセットで覚えるのがコツです。
カジュアルな話し言葉の英語では、基本の文法に当てはまらない使い方がされることもあります。主語が省略されたり、単語だけでも通じる部分もあります。あるいは文法が厳密でなくても伝わることも多いです。
しかしながら、きちんとした文法を知っておくことは、英文の読み書きにおいてはとても重要です。
また、よりナチュラルで相手に「わかりやすい」英語を話すためには、文法の基礎を知っておくことは必ず役に立ちます!
今回は、「動詞」に焦点を当てましたが、実際の英文には、普通の動詞とはちょっと違う「be 動詞」などが使われるパターンもあります。その場合の文型については、また別の記事でまとめていきたいと思います。