英語の文法の中で、特に「難しい」と思われがちなのが、「仮定法」。
仮定法過去?
仮定法過去完了?
仮定法現在?
仮定法未来?
……!???
高校の授業で、こんな文法用語がまるで念仏のように聞こえた人は多いのでは(笑)。
だから英語は難しい。
そう思えてしまうのは、よくわかります!
ところで、この「ムズカシそうな」仮定法。日常会話の中ではどんな時に使うのか?というと、すっごく簡単に言ってしまえば、「(現実はそうじゃないけど)もしそうだったら」という話です。
たとえば、こんなケース。
この例文と、こういうことを言いたい時にどんな英文法を使うか、ということを、前回のブログ記事で紹介しました。
もし『仮定法』について知りたいと思う方は、当記事を読む前に、↑の過去記事をぜひ読んでみてくださいね。
今回は、仮定法にもう少し焦点をあてて、使い方をまとめたいと思います。
ところで、仮定法と一口で言っても、いろーんな用法がありますが、今回は特に、「日常会話の中で比較的よく使われる」使い方を取り上げたいと思います。
基本となる「仮定法過去」と「仮定法過去完了」
まず最初に、最も基本的な「仮定法」として習うのが、If 文を使った、
という形だと思います。これは、先に紹介した過去記事の「2.「過去形」のif 文」の項目で紹介したパターンです。
このパターンは、日本の文法用語では「仮定法過去」と呼ばれたりします。
意味や使い方としては、過去記事の方を確かめていただきたいのですが、ポイントとしては、「文は過去形だけど、意味は『今、もし~だったら、~だろう。』という、現在について仮定している」というところです。
※この使い方で注意点としては、主語に関わらず、be動詞にはwere が使われることがあります。
たとえば、主語が I の場合、過去形の be 動詞は was だけれど、仮定法の場合は I were というのも使われます。
I was の方が、口語では一般的と言われています。が、I were ももちろんOKです。
例)
If I was the owner of that house, I would renovate it and rent out at higher price.
= If I were the owner of that house …
もしも私があの家のオーナーなら、改装してもっと高い家賃で貸すよ。
「仮定法過去」は、現在について仮定している、と書きましたが、では、過去のことについて、「もしあの時~だったら、(あの時)~していただろう。」と言いたい時は、どういえばいいでしょうか?
その時は、
という形になります。これは、先に紹介した過去記事の「3.「過去完了形」の if 文」のパターンです。
そして、日本語の文法用語では、「仮定法過去完了」と呼ばれます。
くりかえしますが、こちらは、過去の時点について「あの時~だったら」「あの時~していたら」という仮定の話をしています。
例文)
【仮定法過去】
If he were/was here, I would be happier.
もし彼が(今)ここにいたら、もっとうれしいんだけど。(その場で言っている)
【仮定法過去完了】
If he had been there, the party would have been more fun.
もしも彼がいたら、パーティはもっと楽しかっただろうなぁ。(イベントが終わった後で言っている)
【仮定法過去】
If you weren’t married, I would go out with you.
もしもあなたが既婚者でなかったら、私達付き合っていると思うよ。(今あなたは既婚者だから、付き合えない)
【仮定法過去完了】
If you hadn’t been married when we first met, I would have loved you seriously.
もしも、初めて会った時あなたが既婚者でなかったら、マジであなたを好きになってだろうな。(あの時、あなたはすでに結婚してたから、好きにならなかった)
アドバイスを表す “If I were you, I would …”
このような仮定法を利用した言い方で、
という慣用句があります。
これは、直訳すると、「もし私があなたなら、~するだろう。」という意味になります。使われ方としては、遠まわしに「~した方がいいよ。」「~するのはどうですか。」と、相手にアドバイスや提案を与える時に使われます。
また、過去のことを言う場合は、
となります。この場合は、「もし私があなたなら、(あの時)~しただろう。」という意味になります。
過去のことを言う場合、文法的には If I had been you, … となるのでは?と思うかもしれませんが、ネイティブの人はそうは言わないようです。
例文)
【仮定法過去】
If I were you, I would choose black one.
もし私なら、黒の方を選ぶなぁ。
(=相手が「何色がいいと思う?」「どっちの色にしようかなぁ?」と聞いてきた場合に使える言い方。)
【仮定法過去完了】
If I were you, I would have chosen black one.
もし私なら、黒を選んだと思うなぁ。
(=相手がすでに選んだものに対して、後で言っている。)
I wish ~ はどんなふうに使う?
先に挙げた、
という例文は、「もし彼がここにいたら、もっとうれしかったのに。」という、「もし~なら」、もっとよい状況になっていた、という気持ちを表しています。このように、
「あー、こうだったら(よかったのに)なぁ。」
という気持ちを表したい時、 “I wish … “ で始まる言い方がよく使われます。
【仮定法過去】
I wish [ 主語 + 過去形の動詞 … ]
「今、~だったらいいのになぁ」
【仮定法過去完了】
I wish [ 主語 + had + 過去完了形の動詞 … ]
「あの時、~だったらよかったのになぁ」
という言い方があります。I wish の後に続く文は、If … の後に続く文と同じルールが適用されます。
たとえば、先の例文
と同じ気持ちを表す言い方として、
I wish he was here.
彼が(今)ここにいればよかったのになぁ。(= でも彼は今いない)
と表現することができます。
また、過ぎた事に対して、
を I wish で表現するとしたら、
I wish he had been there.
彼が(パーティの時)そこにいたらよかったのにな。(でもパーティに彼はいなかった)
となります。
例文)
【仮定法過去】
I wish I could have more time with my kids.
もっと、子ども達と一緒に過ごす時間を取れればいいのになぁ。
(=今その時間が取れないことを嘆いている)
【仮定法過去完了】
I wish I could have had more time with my kids.
(あの時)もっと子ども達と一緒に過ごす時間を持っていればよかったなぁ。
(=昔、その時間が取れなかったことを嘆いている)
【仮定法過去】
Are you having fun? I wish I was there!
(電話で話している相手に)そっちは楽しんでる?私もそこにいられたらよかったなぁ。
(=離れた場所にいる相手に対し、私は今そこにいないけど、いたらよかったよね、と言っている)
【仮定法過去完了】
Did you have fun last night? I wish I had been there!
昨夜は楽しかった?私もそこにいたかったなぁ。
(=相手は昨日どこかで楽しんだ、という過去の話に対して、その時私も一緒にいられたらよかったな、と言っている。現実にはその場に私はいなかった)
would の文のニュアンス
これまでの説明のように、If~文や、I wish … で始まる文であれば、「これはもしかして仮定法?」と気づきやすいと思います。
しかし、必ずしもそうではないけれど、意味的には「もし~ならば」という仮定を含んでいる、というパターンがあります。
代表的な例として、would が文に含まれる時があります。
たとえば、以下の2つの文。
“It will be nice to go out with you tonight.”
“It would be nice to go out with you tonight…, but I have a meeting at 7pm.”
両者の違いは、何でしょうか?
ここで、再び前回の過去記事を思い出してくださいね。
1.「現在形」のif 文
( If 現在形の文, 主語 + will … )
→ 未来について、「もし~なら、~するだろう」
2.「過去形」のif 文
( If 過去形の文, 主語 + would … )
→ 「もし仮に(今)~だったら、~するだろう(けど、現実はそうじゃない)」
2.の場合、「仮に今~だったら、」という仮定の意味合いがあり、「現実にはそうではない」という意味も含まれています。
そこで改めて、例文を見直してみると、
It will be nice to go out with you tonight.
今夜あなたとおでかけするのはステキだろうな。
こちらは、たとえば「今夜でかけない?」「それはいいね。」と話しているシチュエーション。意味としては、「でかけることに賛成している」「でかける可能性がある」、つまり言葉通りの意味に受け取れます。
一方、2番目の例文は、
It would be nice to go out with you…
あなたとでかけられたらいいだろうなぁ。
こちらは、「(もしも行くと仮定したら)それはステキだろうなぁ。でも、7時にミーティングがあるんだ(現実には行くことはない)。」
というニュアンスになります。
このように、would が入ることで、「(もしもそうなると仮定した場合)」「(もしもそうだとして)」といった意味を持たせることがあります。
例文)
I would recommend this book to people who want to study English.
私なら、英語を勉強したい人達にはこの本をお薦めします。
(もしも私のお薦めを挙げるとしたら、という感じを足している)
I would do anything for you.
あなたのためなら何でもするよ。
(「もしもそう問われるなら」「もしもそうすべき状況になったとしたら」というような仮定のニュアンスを含む)
I wouldn’t be happy to do it again.
もう一度それをやるなんて、やだなぁ。
(もし、もう一度やることになったとしたら、という仮定の話)
※would 自体は、他にも多くの用法があるので、wouldが出たから必ず仮定法、というわけではありません。
まとめ
ここにまとめたのは、「仮定法」の中でも、わりと日常的に使われやすいタイプの使用法です。
文法書を見ると、他にも色んなタイプの使い方が出てくると思います。
が、いきなりすべてをマスターしようとしても、頭が混乱しちゃいますよね。
でも、全部覚えないと、ちゃんと英語が通じないか?というと、そうでもありません。たとえば、英語の文学作品などを読む場合は、「倒置の仮定法(If I were you, → Were I you, という使い方)」はわりとよく出てきます。が、日常会話では滅多に使われません。
現代の日常的な読み書きや、会話のコミュニケーションということを考えると、まず今回紹介した内容をマスターしておくと、役に立つと思います。
これらが使えるだけでも、幅広い理解・表現ができるようになるのでは、と思います。
実際に、would を使ったやや遠まわしな表現というのは、ネイティブ英語によく出てきます。ニュアンスをつかめると、また少し自信を持って英語が使えるようになるのではないでしょうか。