高校・大学生・大人におすすめの英語の本。 The Boy In The Striped Pyjamas(縞模様のパジャマの少年)

今15歳の娘は、西オーストラリア州の公立ハイスクールに通っています。

時々娘が、「今、授業でこんなことをやっているんだけど」と話をしてくれます。歴史だったり科学だったり、いろんな分野がありますが、彼女はすべて英語で学んでいるので、私自身も話を聞きながら、辞書を調べたりして勉強させてもらっています(笑)。

そんな娘が、以前学校の英語の授業で読んだ、という小説を、私に紹介してくれました。

『The Boy In The Striped Pyjamas  (John Boyne 作)』

日本でも、『縞模様のパジャマの少年』というタイトルで、翻訳されているようです。

せっかく娘に教えてもらったので、私もオリジナルの英文小説を読んでみました!

というわけで、今回はその本の解説・感想を書きます。

英語の勉強に、読みやすい洋書の小説を探している方に、参考になればと思います。

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どんな本?

ジャンルは小説です。内容自体はフィクションですが、舞台は、第二次世界大戦中のドイツであり、当時の歴史的事実の上に成り立っているストーリーです。

娘は昨年、Year9(日本で言えば中3)の時に、この本を授業で読んだそうです。

この本は、英語圏では「中学生くらいからティーンネイジャーを対象に書かれた本」とされています。

日本の人なら、英語が得意な高校生、大学生が読むのにぴったりだと思うし、英語勉強中の大人にも、十分おすすめできる本だと思いました!

この小説は、主人公が9歳の少年であり、その視点でさまざまなことが描かれます。

ページ数は200ページ強。全体的に、難しい専門用語などは出て来ません。そのため、英語を勉強中の人ならば、比較的読みやすい本だと思います。

(画像はページ例。文字もそこそこの大きさ。)

ただ、やはり全体的に小説らしい英文になっているので、現代の日常会話やビジネスで使われる表現とは、雰囲気が違うなぁと思いました。

比喩表現が多く使われたり、あえてそのものを直接的な名詞で言わずに表現していたりします。

“as if ~”(あたかも~のように)といった表現も多用されていますし、「~のように」と明確なたとえになっていない部分もあります。「それが実際は何なのか」を、正確に読み取ることが、小説など英語の文学作品を読む時の『難しさ』だと個人的には感じます。

主人公は、9歳のドイツ人少年、Bruno。ベルリンに住んでいます。が、ある日学校から家に帰ると、自分の部屋でメイドのMariaが荷造りしているところに遭遇します。驚いているBrunoに、母親は「お父さんの仕事の都合で、引っ越さないといけなくなった」と言います。ここからストーリーが始まります……。

以下は、ストーリーのネタバレではありませんが、この物語を理解するために必要な時代背景などについて、解説しています。この小説をより理解し、味わうための助けになれば、と思って書いていますが、まっさらな状態でこの本を味わいたい方は、ここまで!

ちなみに、「何も知らないまっさらな」主人公の目線で読むのと、背景となる事実を知った上で読むのとでは、ずいぶん違うストーリーに感じられるのではないかと思います。


Boy in the Striped Pyjamas

(画像はAmazon.co.jpへリンクしています)

あらすじと解説

Brunoは、父親・母親・3歳上の姉Gretel、との4人家族。一家とメイド達は、急いで荷造りし、「父の重大な仕事」のため、新しい土地へ引っ越します。

Brunoは、大好きなベルリンの町、住み慣れた家、大切な3人の友達、おじいさんおばあさん……と離れるのが、とてもイヤでたまりません。

でも、「お父さんのとっても大切な仕事のためだから」と、みんなは言うのです。

しかしBrunoは、その「大切な仕事」が何なのか、実はよくわかりません。お父さんの仕事は、Furyという「えらい人」が父に与えた重要な役割だと言う事、そして仕事の時は、父は「カッコいい制服を着ている」、ということ。……知っていることは、それだけ。

Brunoは新しい家が気に入りません。姉とその話をした時、姉はこの場所を、Out-With と言います。Out-With …? しかし小説の最後の方になってくると、Out-Withというのは実は正しい言い方ではなく、本当の名前が別にある、ということがわかります。

本の前半、ほぼ半分ほどは、Brunoのベルリンでの暮らしと、家族の様子、一家が Out-With に来る直前の出来事などについて書かれています。その回想と、Out-With で起きたこととが、織り交ぜられながらストーリーが進みます。

この物語を理解するためには、ナチスドイツに関する基礎的な知識が必要です。

Brunoが言う“the Fury” とは、ドイツ語の “the Führer”=「総統」 を言い間違えたものと思われます。つまり、ナチスドイツの総統、ヒトラーのこと。

そして、“Out-With” というのは、おそらく「アウシュヴィッツ」のことだと思われます。

お父さんは “Commandant” = 「長官・司令官」と呼ばれ、若いソルジャー達に指示を与えている様子が読み取れます。

ナチス・ドイツの歴史を多少なりとも知っていれば、この家族のシチュエーションが読み取れます。つまり、お父さんはナチスのかなり高い地位にいる人で、ユダヤ人などの大虐殺が行われた強制収容所『アウシュヴィッツ』に、指揮官として赴任したのです。ヒトラー直々に任命されて。

Out-Withの家の周りには、他に民家もありません。Brunoは遊び相手もなく、とても寂しい思いをしています。

ところがBrunoは、家の2階にある自分の部屋の窓から、ある光景を目にします。

家の敷地の外側には、高い金網のフェンスが張り巡らされていました。向こう側には、広い土地があり、たくさんの人々が住んでいるようなのです。大人・子ども、さまざまな年代の人達がいましたが、みな汚らしい姿をして、しかも全員お揃いの、灰色のストライプ模様のパジャマを着ています。

Brunoは興味深々です。彼らがどうして、あそこにいるのか。あそこで何をしているのか……。

そして、ついにBrunoはある日、探検にでかけます。そしてフェンスの向こう側に男の子をみつけます。

やはり灰色の縞模様のパジャマを着たその男の子は、Shmuelと名乗ります。二人は同じ誕生日であることがわかり、フェンスを隔てておしゃべりを始めます。それからBrunoは、毎日のようにShmuelに会いにでかけるようになり、二人はフェンス越しに会って話をする、という交流を続けます……。

Brunoは、Shmuelの話を聞いて、自分と色んな共通点があることを発見します。

ある日突然、お父さんの仕事の都合で、無理矢理住み慣れた町を去り、友達とも別れなければならなかった、自分。

Shmuelが、ある日突然、ポーランドの家を離れなければならなくなり、そこから生活が一変し、最終的にこの場所に連れてこられた、という話(実際に読むと、とても身に迫るものがありますが)を聞いて、Brunoは共感を覚えます。

でも、実際にこの「アウシュヴィッツ」がどんな場所か?何が行なわれたか?を知っている読者にとっては、Brunoが「同じ」と思っていることが、Shmuelにとっては真逆の意味を持っているとわかるでしょう。

もちろん、Shmuelが着ているこの「縞模様のパジャマ」というのは、収容所の人達が着せられた、囚人服です。

この小説自体はフィクションです。ラストはショッキングです。ストーリーとしてもインパクト満点で、深い読後感を味わえます。

が、そのラストの意味も、やはりアウシュヴィッツで行われた『ガス室による大量のユダヤ人虐殺』の事実を知らないと、ピンとこないかもしれません。ただ、Brunoにとっては、すべてがまるで何もわからないまま、進んでいくわけなんですが……。

ちなみに娘は、ちょうどこの小説を英語の授業で読んでいる時期に、歴史の授業ではナチス・ドイツのことを習っていたようです。

英語の先生と社会の先生で、タイミングを合わせたのかどうかはわかりません。

でも、歴史的事実を学びながら、このような小説を読む、というのは、相互に理解を深める上でとてもよいことだと思いました。

ナチス・ドイツについて、こちらの過去記事でも少し触れています。

なぜ私が海外の教育を選んだのか。日本との違い。
「大人が英語を学ぶ」という観点で書いているこのブログですが、そもそも私自身が40代になってガチの英語を学ぶことになったきっかけは、「オーストラリアに移住することになったから」です。...

また、『アウシュヴィッツ』は、現在は観光客が見学できるように公開されているようで、日本語でも色んな方が、ブログで旅行記を書いておられます。一例として、GIGAZINEに2012年に掲載された以下の記事を、リンクしておきます。内部の写真などもたくさんあり、こちらを見てからこの小説を読むと、よりイマジネーションが膨らむでしょう。

アウシュビッツ強制収容所に行って分かったこと、分からなかったこと|GIGAZINE

この小説を読む時のポイント

もう一つ、この本を深く味わうためのポイントとしては、場面ごとの描写を正確に読み取る必要があると思います。英文そのものは、すごく難解というわけではありませんが、丁寧な読解が必要だ、と感じました。

この本には、戦争やナチスの行った大虐殺の、直接的な悲惨なシーンの描写は出て来ません。物事は、すべてBrunoの視点で、つまり「ナチスが何を行っていたかをまったく知らない、子どもの視点」で描かれていきます。

だから、事実背景を知っていると、全てが不釣り合いに呑気で、無神経にすら思えるほどです。

でも当時、多くのドイツの一般人は、戦争が終わってすべてが明らかにされるまで、このようなユダヤ人の大量虐殺の実態をハッキリとは知らなかった、といいます。Brunoの視点は、今振り返ると「ここまで無神経でいられるなんてありえない」と感じてしまうけど、意外と当時の多くの人にとっては、これがリアルだったのかも、なんて思います。

ただ、Brunoの目から見た事実をつなぎ合わせた時、そこになぜか、つじつまの合わなさ、もやもやとした理不尽さのようなものが漂います。

Brunoはただ、Shmuelと仲良くしたい。

なぜ、そこにフェンスがあるのか?

なぜ、同じ人間なのに、フェンスの向こう側とこっち側の人間は、仲良くしちゃいけないのか?

なぜ、彼らは「ユダヤ人」で自分たちは「そうではない」人間なのか?何が違うのか?

なぜ……?

でも、その「筋の通らなさ」、その理不尽さこそ、おそらくこの小説の『核』となっているところではないか、と思います。

「戦争」や「人種差別」がいかに理不尽なことか。

Brunoの目から見たさまざまな出来事を通して、それが浮き彫りになるしかけになっています。

でもこの本は、最終的に具体的な答えを、読者に与えてはくれません。

だからこそ、Brunoの視点から見た「事実の描写」を、しっかりと丁寧に読み取ることが、この小説を味わうための大切なポイントだと感じました。

また、Brunoの周りの、父・母・おじいさん・おばあさん……、関わる人々の描写もたくさん出てきて、それらがストーリーのキーになっています。それぞれの人物像をとらえながら読んでいきたい物語です。

本と関連リンク

以下に、Amazon.co.jpへのリンクを貼っておきます。解説やレビューもあるので、興味がある方は参考にしてみてください。

英語版・原書。


Boy in the Striped Pyjamas

Kindle版。


The Boy in the Striped Pyjamas

世界各国で、翻訳も出ているそうです。

日本語の翻訳版。英語版を読んだ後に、より理解を深めるために読むのも良いですね。


縞模様のパジャマの少年

また、同じタイトルで映画化もされています。小説を読み終わった後に見ると、理解を深めたり、別の面からこのストーリーを味わうために、大きな助けとなるでしょう。ただ、映画では、小説と部分的に違いがあるようです。私は見ていませんが、映画作品としても話題になったようす。

The Boy In The Striped Pyjamas 映画(DVD)


縞模様のパジャマの少年 [DVD]

まとめ

以前の記事でも書きましたが、日本では、特に若い人がナチス・ドイツの歴史について学ぶ機会が減っていると思います。

それだけでなく、第二次世界大戦について知る機会そのものが、少ないのでは、と思います。

ですが、「国際化社会で生きていく」ために、学ばなければならないのは『英語』だけではない、と、私はオーストラリアに住んでみて思いました。特に第二次世界大戦のことは、現代社会に影響を残している部分も大きいです。「日本人」として世界の人と触れ合う時、やはりそのあたりの歴史を、日本人はもっと知らなくちゃいけないのでは、と私自身は感じています。

この本は、ティーンネイジャー向けに書かれた本なので、「英文を読む勉強」という意味でも比較的入りやすいと思いますし、テーマとしても考えさせられるもので、読む価値があるのではないかと思います。

特に、英語力を鍛えたい高校生・大学生には、内容そのものも含めておススメしたいです。もちろん大人世代が読んでも、読み応えありますよ。

ぜひ、英語のリーディングの経験を増やすために、読んでみてはいかがでしょうか。

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