日本語で人・物を褒める時、おそらく最もポピュラーな言葉の一つである、カワイイ。
赤ちゃんや小さい子を見て、思わず「かわいい!」と言うことはありますよね。
「かわいい犬や猫」の動画が、SNSでは大人気。
また、特に女性であれば、「かわいい服」「かわいい靴」「かわいい文房具」などなど、ちょっと素敵なデザインの品物に対しても言います。
あるいは、女性を形容する言葉として、「●●さんってかわいいよね。」というふうに使われます。
英語を学び始め、海外の人と知り合いになって簡単な会話をする時、やはり日本語の感覚で「かわいい!」と言いたくなる時があるでしょう。
この「かわいい」という感覚、英語ではどんなふうに表現したらよいでしょうか?
あるいは、人に対して「かわいい」という褒め言葉は、英語圏でも通用するのでしょうか?
今回は、「カワイイ」を表す英単語のバリエーションと、「どんな対象に対して使うのか」ということを紹介します。
子ども、小さな動物などに「かわいい」
赤ちゃん、小さな子ども、子犬や子猫、動物の赤ちゃんなど、「小さくて愛らしい人・生き物」に対して、「かわいい~」と言う時。
最もよく使われる言葉は、cute です!
日本語でも「キュート」という言葉はしばしば使われるので、知っている人も多いでしょう。
もう一つよく使われるのが、adorable という単語です。「すごくかわいい」という感じです。日本ではあまり知られていない英単語ですが、私の住むオーストラリアではよく耳にしますね。
※adorable は、比較的女性が好んで使う単語だという説もあります。
また、sweet も、やはり子どもや愛らしいものに対する「カワイイ」という意味合いで使われます。
“Look! that koala has a baby! How cute it is!” “Yeah, adorable!“
「見て!あのコアラ、赤ちゃんがいる!なんてカワイイの!」「うん、すごくかわいいね!」
How adorable are these four-week-old baby camels?
この生後4週のラクダの赤ちゃん達、なんてかわいいの?
His baby brother is so cute!
彼の幼い弟はとってもかわいい!
Oh, your daughter is so sweet.
あらまぁ、あなたの娘さんとってもかわいいわね~。
これらは、小さい、あるいは幼い子どもや、動物、物などに対して、愛らしい様子や、思わず見とれてしまうような、「かわいい」という感じを表しています。
物に対して「かわいい」は?
また、特に女性では、「このお財布、チョーかわいくない?」「この服かわいい~。」など、物に対して言う時もありますよね。
そんな時も、先に出てきた cute や adorable, sweet を使うことができます。やはり「見て魅かれるかわいらしさ」を表します。
This cuddly toy is very cute, isn’t it?
このぬいぐるみ、超かわいくない?
Look at this floral summer dress! What a sweet design it is!
この花柄のサマードレス、見て!なんてかわいらしいデザインなの!
または、pretty という言葉も使えます。
pretty は、「美しく素敵な物」を表すのに使われる言葉です。特に、一般的に女性が好むような、美しい飾りやデザインなどに対して使われます。
たとえば、
It’s a pretty bow!
そのリボン、かわいい!
She’s wearing a pretty summer dress.
あの子、かわいいサマードレスを着ているね。
などのように使われます。
また、pretty の他に、lovely, nice, beautiful なども、物が魅力的で、ステキ!という感覚を表す時に使える形容詞です。
Your hair is lovely!
あなたの髪(髪型)、かわいい!
I like this handbag. Really nice.
このハンドバック好きだな。ホントにすてき。
※ pretty には、まったく別の意味もあります。
→ Pretty goodの意味がスッキリわかる!英語で「程度」の表現方法。
女性の魅力について言う時は?
また、先に紹介した pretty は、もちろん、人(一般的に女性、子どもの女の子)に対しても使います。
She looks pretty in that dress.
あのドレスを着た彼女はきれいだね。(美しい装いをしているので、一層素敵に見える、ということを褒める言い方)
I know Susan. She is a nice, pretty girl.
スーザンのことを知ってるよ。彼女は素敵でかわいい女の子だよ。
また、lovely も同じようなニュアンスで使うことができます。ただし、lovely は外見だけでなく、人柄がよい、全体的に素敵だ、という意味でも使われます。男性に使ってもOKのようです。
He’s lovely.
= He’s a nice guy.
彼は素敵だね。
また、大人の女性の見た目を褒める言葉としては、beautiful (美しい)も定番ですね。その他、nice, great, wonderful などの形容詞も使えます。
大人の女性が「かわいくなりたい」のは日本だけ?
ところで、日本のアニメキャラクターなどが海外でも人気になっています。それにつれて、kawaii という言葉が sushi(すし)や bento (弁当)などと同じように、英単語として知られるようになってきているようですね。
たとえば、Hello kitty や Pokemon などは、海外でも大人気ですが、こうしたキャラクターを指して “Kawaii!” と表現したりします。
英語圏の人々の解釈では、kawaii の意味は、cute や adorable が最も近いようです。
やはり、「小さなもの・子どもや少女など」のかわいらしさを表して、あるいはそのような「愛らしさ」を思わせるようなデザインやファッションに対して使われる、という認識です。
ところで日本では、「女の子」だけではなく、大人の女性に対する褒め言葉としても、「かわいい」はよく使われますよね。
男性が女性に対して評価する場合も、女性同士で言う場合も、「あの人かわいいよね」という時は『女性らしさ』を褒める意味で使われます。
当の女性にとっても、「かわいい」ということは「女性として価値の高いこと」と受け止められていると思います。「大人かわいい」という表現もあるし、「子どもを産んでも『かわいいママ』でいたい!」という価値観は、今、日本の多くの女性が持っているのではないでしょうか?
もうひとつ、日本の女性に対する価値観として、「若く見える」ということが魅力の一つとして重視されています。
「●●さん、何歳?」「38歳です。」「え、若いー!見えない―!」
こう言われると、女性としては内心、「ヤッタ♪」って思いますよね。私もそうでした(笑)。
こうして、改めて「かわいい」の意味を考えてみると、「かわいい」とは、小さいもの、年下のもの、子どもっぽい(子どもらしい)ものに対して「愛らしい」と感じる気持ちなのかな、と思います。
つまり、「若く、幼く、子どもっぽい」ということが、女性としての魅力……という価値観と言えるでしょう。
でも、私自身がオーストラリアで生活してみて思うのは、こちらではちょっと違うな、ということです。
オーストラリアでは、大人の女性に対し、あるいは女性同士で、相手をジャッジするために年齢を尋ねることはないように思います。もちろん話の流れで言うことはあるとしても。
また、年齢より若く見えるかどうか、ということを気にしている人は、日本ほどいないようです。
とはいっても、歳をとっても、子どもを産んでも、女性として美しくありたい、という願いは、こちらでも共通なのだとは思います。
ただ、日本ほど、「若い」ということが女性の価値として重視されていない、というふうには感じます。「●歳過ぎたら女として終わってる」なんて、こっちで言ったら怒られるでしょう(笑)。
日本では、なぜ「若く(見えて)かわいい」ことが、とりわけ女性の魅力として価値を置かれるのだろう?なぜ「美しい」でも「きれい」でもなく、「かわいい」ことが重要なのか……?
「かわいい」って、ある種の「自分より(色んな意味で)弱いもの」=自分の方が立場が上、という安心感を、異性に与えるんじゃないか。それが「かわいい」女性が重宝される理由では?なんて思ったり。
日本で、女性に対して「かわいい」という価値観が際立って重視されているのは、「自分の意志表示をしない」「男性が優越感を感じられる」「自分より物を知らない」女性が良い、ということが、社会の価値観としてあるんじゃないか、と思いました。
自立していて、自分の意見をハッキリ言い、世間を知っていて、人生経験を積んでいるオトナの女性は、「かわいく」なんかないんです。その分、大人としての思慮深さや経験の深さ、あるいは歳をとっても変わらないその人自身の個性は、「若くかわいい」とは別の魅力を生み出すと思うのですが……。
私はこちらに来て、日本の「かわいい」という価値観で自分を評価されることがなくなり、自分が「若くかわいく見えるか」ということがどうでもよくなりました。
英語で、大人の女性の魅力を褒める時、cute を使うのはふさわしくない、と言われることがありますが、このような理由からだと思います。一般的に、大人に対して cute はちょっと的外れな印象です。
まとめ
今回の記事では、「かわいい」に関する英語表現をまとめました。
ただ、ここで紹介したことは、本当に基本的な内容です。
たとえば、若者のスラング表現においては、女性が魅力的な男性のことを、
He’s so cute!
彼って超イケてるよね!
なんて言うようだし、大人の女性に対しても、魅力的な様子を cute や sweet を使って表現するケースもあるようです。
実際に日本語でもそうですが、「かわいい」という表現は、シチュエーションや相手との関係性、その場のノリ、などによって、さまざまなニュアンスに変化する言葉ですよね。聞く人によっても、受け取り方は違うかもしれないし。特に、恋愛対象かどうか、なんて判断が入ると、ややこしくなりますし。
今回の記事中で紹介した使い方は、最も無難で、基本的で、英会話初心者が社交辞令や軽いおしゃべりで使っても誤解を招かない、ベーシックな使い方、ととらえていただけるとよいと思います。
また、女性に対する魅力について、日本と英語圏での価値観の違いについても紹介しましたが、これは私がオーストラリアに来て、とても興味深く感じたポイントです。
ま、私自身、残念ながら「美人」と言われたことは生まれて一度もなく(笑)、言われるなら100%「かわいい」でした。背が低いので、そうなるんでしょうね~。
でもこちらでは、人から cute と言われたことはありません。が、パーティなどでおしゃれして行くと、 “You look beautiful today!” のように言われることはあります。
「美しい」とか「素晴らしい」とか、英語では、その人が特別な「美人」でなくとも、人を褒める時には躊躇なく使われますね。サラッと言われると、やはりうれしいものです(笑)。