先週、こんなニュースを見ました。
小学校の英語は3年生から 学習指導要領の改訂案公表 (2017年2月14日)
- NHK News Web
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170214/k10010876321000.html
※ニュースの記事が削除されたため、リンクを解除しました(2018年10月)
文部科学省が学習指導要領の改訂案を公表した、というニュースです。
今回の改訂案には目玉がいくつかあるのですが、特に注目を集めたのが、『英語教育』について。
2020年をめどに、日本の学校教育では、小学校3年生から英語の授業が始まるとのことです。
私自身は、40代で英語圏にやってきて、今も特に「英語を話す」ことに悪戦苦闘しています。
日本の英語教育、ひいては日本の教育そのものに、色んな思いがあります。
その立場で今回のニュースを見て、思わず怒り(笑)ギモンが・・・
だって、多くの人達が思っているハズ。
「なんで中学高校とあれだけ英語を勉強してきたのに、こんなにも英語ができないのか」
って。
新たな教育方針は、「英語が話せる」人を育てるために、役に立つのでしょうか?
この点について、ちょっと考えてみたいと思います。
小学生中学生の英語学習はどう変わる?
『学習指導要領』というのは、義務教育である小中学校を対象とし、国が策定するもので、どの学校でも共通の教育水準を満たせるよう、教える教育内容や目標を示したものです。
公立の学校は、この内容に沿って授業を行っています。
学習指導要領は、おおむね10年ごとに改定されるそうで、今検討されているものは2020年あたりから実施される予定だそうです。
今回のニュースによると、小学校の英語の授業は、以下のように変わります。
今現在 | 新しい指導要領 | |
---|---|---|
小3、4年生 | ーーー | 『外国語活動』として英語の学習を行う。週1時間。「聞く・話す」が中心。成績評価はない。 |
小5,6年生 | 『外国語活動』として英語の学習を行っている。週1時間。「聞く・話す」が中心。成績評価はない。 | 「読む」「書く」を含む正式な教科となる。教科書を使った授業を行う。週2時間。成績評価あり。 |
中学では、
今現在 | 新しい指導要領 | |
---|---|---|
中年生 | 約1200語を覚える。 | 1600~1800語を覚える。英語の授業を英語で行う。 |
これらが、大きな変更点のようです。
特に小学校では、英語の授業時間が増えることになりますが、今でも時間がギリギリめいっぱいだそうで、先生も多忙を極めている状況です。
そのため、「どうやって新たな英語の授業時間を確保するか?」が問題になっているそう。
それについて、この学習指導要領の改定案を作った文部科学省では、
「夏休みや冬休みなどの長期休暇を削るか、土曜日に授業を行うか、朝学習の時間(15分)などの時間を利用して、弾力的に授業時間を確保する。」
といった案を出しているそうです。
ど、どう思いますか!?
私、まず「英語の学力」より何より前に、先生方の心配をしちゃいました。
ただでさえ、授業の準備、保護者対応、上への報告書作成、部活、などなど・・・で、先生方の忙しさも限界だといいます。
ある報告によると、公立小中学校の先生の70~80%が、週60時間以上働いているとのこと。
平日5日勤務と考えても、1日12時間!
これ、ブラック 〇〇 じゃないですか。。。
この状況で、実のある授業ができるんでしょうか。
予め確保された授業時間では、もう空きがないから、休みの日を削るとか、1日15分ずつこま切れに授業するとか・・・
まだ「案」の状態とはいえ、この学習指導要領を決めた文部科学省、ずいぶん無責任じゃないですか?
子どもにとって英語の勉強は楽しい
ところで、先のNHKニュースの映像を見て、私がとても考えさせられたことがあります。
ニュースの中で、小学校5年生の英語の授業風景が映し出されました。
そして英語の授業について、小学生の男の子が
「最高!(英語の授業が)もっと増えたらいいな!」
とニコニコしながらインタビューに答えているんです。
そう、そうなんです!
本来子どもにとって、英語の勉強って、楽しいと思うんですよ。
日本語とは違う言葉がわかる。話せるようになる!
今は日本にいても、身の回りに英語があふれています。海外ミュージシャンの音楽、ハリウッドやディズニー映画。海外アスリートのインタビュー・・・英語ができたら楽しいだろうな、って、子どもでも考えると思います。
しかも、子どもは好奇心が旺盛。
海外の人と触れあって、自分の知らない世界について感じることは、とても刺激的で楽しいコトなはず!
ニュースの映像を見る限り、英語の授業風景も、のびのびとして、とっても楽しそうです。
ところが・・・いつから「英語の苦手意識」が刷り込まれるようになるんでしょうか?
2015年の文部科学省の調査では、高校3年生の約6割が「英語の学習が嫌い」と考えていることがわかりました。
ちなみにその調査では、高校3年生のおよそ8割が、中学3年生レベルの英語力であることもわかりました。
小学生の時は、目を輝かせて「楽しい!」と言う、英語の勉強。
なのに、なぜ高校生になると、「英語が苦手」「英語ができない」になっちゃうのでしょう。
考えさせられます。
日本の英語教育は英語を学ぶためのものじゃない
確かに年齢が上がっていくと、期待される学習のレベルそのものが上がってきます。
いずれ大人になって、英語を使うことが求められた時、小学生レベルの無邪気な英語でOK、というわけにはいきません。
必然的に、学習の難易度が高くなるので、一部の生徒が苦手意識を持つようになるのは、しかたのないことだと言えるでしょう。
それでもやはり、日本人の「英語ニガテ!」人口は、多いと言わざるを得ません。
私自身が強く思うのは、やはりなんらか、「日本の学校の英語教育」に問題があるのではないでしょうか?
小学生の英語学習は、楽しいのです。
おそらくそれは、点数をつけられたり、評価されることがないから、、、ではないでしょうか?
間違ってもうまくできなくても、批判されない。
周りの子と、点数によって比べられない。
英語を使ってやりとりする姿勢そのものが大切にされている。
そんな授業だから、子ども達は心から楽しめるんじゃないでしょうか?
一方、高校3年生というと、多くの学生は大学受験が目前。
英語の勉強なんて、ほとんどが「受験」のためでしょう。
受験のための勉強は、入学試験で点を取るための勉強であり、とにかく単語やつづりを覚えること、文法を覚えることになります。
たとえば文法を覚えることも、「こういうことを表現したい時にこういう文法を使う」という覚え方ではありません。まるで数式のようにルールを覚え、それに合えば〇、それに合わなければ×、というような捉え方です。実際に受験のテストが、そういう出題だからです。
でもこうした考え方が、「日本人の英語」を「ネイティブの英語」とかけ離れたものにしてしまっているのでは、と私は思います。
さらに、日本の学校教育の中では、「失敗する」「間違える」ということがずいぶんネガティブなイメージがあります。
たとえば、つづりの間違いはダメ。
文法の間違いはダメ。
発音がヘタなのはダメ。
・・・日本では、ヘタでも、間違えても、失敗してもやる、ということが、なぜか嫌われます。
ヘタで、間違えだらけで、失敗するくらいなら、やらない方がいい = 英語をしゃべらない、使わない、学ばない。
こんな意識もあるんじゃないでしょうか?
まず、「受験のための英語」を、学校教育からとっぱらったらいいのにな、と私は思います。
1回習っただけで、完璧に覚えないといけないの?
また、日本の学校教育では、教えたことを「理解できたか」「できていないか」で判定されます。
1回授業で教えられて、そこで覚えられなかったら、「できていない」という成績がつけられてしまう。
が、文法なんて、1回の説明で正確に理解するなんて、なかなかできないもの。
さまざまな例文に触れながら、少しずつ理解していく・・・そういう反復学習が、英語の習得には欠かせないと、私は思います。そうやって繰り返すうちに、だんだん慣れて、うまくなっていく。
それは、公教育である以上、どこかで評価は必要でしょう。が、できないことを恐れる必要はないはずです。少しずつできることを増やして行けばよいのです。
なぜか、日本の学校教育の中では、そういう考え方ができません。
すごく子ども達は焦らされている。
恐らく先生も、じっくり反復学習をする余裕なんてないでしょう。
このような状態で、新たな学習指導要領が導入され、小学校5,6年生の子や、中学生の子達が、英語を嫌いになってしまうことを、私はとても懸念します。
まとめ
私自身は、小学校低学年から英語の授業を始めることそのものは、賛成です。
子どもにとって、英語を学ぶことは楽しいと思うし、感性が柔軟なうちから取り組むことは、大きなメリットだと思います。
英語を学ぶことによって、世界が広がり、人生のチャンスが広がる可能性は大いにあります。
ただ、今回の新しい学習指導要領のような方向性では、ますます英語嫌いの若者を増やしてしまうだけなのでは・・・と心配します。
とにかく授業を増やせばいい、覚える内容を増やせばいい、というものではないはず。
なぜ学校の授業をやればやるほど、「英語嫌い」が増えていくのか、その理由を突き詰めてほしい。
まず「間違ってはいけない」という考えから、自由にならないといけない気がします。
間違いを積み重ねることなしに、英語は上達できないと思います。
私自身は大人になり、今40代で英語の勉強に格闘していますが、、、
英語を学ぶ目的が明確であること(英語圏で暮らしていくということ)と、進み具合やレベルを他人と比べられない、ということが、むしろ英語を勉強する上ではプラスに働いているように思います。
本当は、若い学生の人達にこそ、こんな形で「使える英語」を学べたらいいのだろう・・・と思います。